訪問介護事業所の倒産が相次ぐ

実は倒産が増えている

訪問介護業界は2025年問題や人手不足などの様々な問題を抱えています。その中でもあまり知られていないのが、倒産数の多さです。東京商工リサーチの調査によると、2023年度における「老人福祉・介護事業」の倒産は120件以上となっています。また、倒産以外にも事業を停止した事業者が該当する「休廃業・解散」は510件となりました。これは、過去最多の数字だそうです。630件もの事業者が介護事業を諦めているというわけですね。

訪問介護事業所が特に多い

業種別に見ると、特に倒産が増えているのが訪問介護事業所です。その数は67件で、前年と比較すると34％も増えているんですよ。介護施設に比べて人手不足が深刻化していることが大きな要因と考えられます。人手不足に関する調査の結果によると、2011年度において「大いに不足」と感じている事業者が27.1％、「不足」と感じている事業者が10.5％となっています。それが2019年度には、「大いに不足」が29.2％、「不足」が26.5％と、あきらかに「不足」と感じている事業者が増えていますね。人手不足や賃金水準の低さ、業務負担などの悩みが多く、特に訪問介護は職員の負担が大きいといわれているため、人材の確保に苦戦しているようです。すでに離職した職員の勤続年数も、訪問介護に関しては「1年未満」の人が36.3％と非常に高い割合になっていますよ。

小・零細事業者は厳しい

倒産の原因について、より深く掘り下げてみましょう。倒産の原因として多いのは、他の事業者との競合や人手不足の影響で利用者数が減ったことによる、売上不振です。92件の事業者が売上不振を理由に倒産しています。次いで、他社倒産の余波、赤字累積による既往のしわ寄せ、運転資金の欠乏などが倒産の理由として挙げられます。人手不足に悩んでいるのは訪問介護業界だけではありません。少子高齢化の影響でどの業界も人材の確保に苦しんでいます。そういった状況で、賃金水準の低い訪問介護業界は苦しい戦いを強いられているんですね。
さらに、事業者の倒産は小・零細事業者が多いことも判明しています。規模別の離職率も、小規模な施設の方が高く、規模が大きくなるにつれて減少していきます。小規模な施設は大規模な施設に比べて資金に限りがあるので、業務効率化ツールの導入が上手く進んでいません。人手不足を補うツールを導入できないため、現場で働く職員の負担が大きくなり、それがさらなる離職につながるという悪循環に陥っているケースも少なくないようですね。加えて、職員の平均年齢が上がっていることも影響しています。大手の参入が増えてきているため、今後は小・零細事業者の倒産が加速していくと予想されます。